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番外編: 立川談志 [落語]

談志 「お化け長屋」



立川談志師匠は、「笑点」の初代司会者だとのことです。




ちきり伊勢屋(ちきりいせや

四代目柳家小さん

 昔紀州の浪人で白井左近(しらいさこん)という学者がありました。この人御主人を諫(いさ)めて御不興を受け、長の御暇(おいとま)、よんどころなく江戸へ出て、麹町半蔵御門外へ出て、夜分辻占いを致し、
左「サァ往来の方、私は易を観る。人相も観るが、人には吉凶善悪、日の内にいろいろの事がある。お持ち合わせのある方はいささかでも申し受けるが、御持ち合わせのない方は無料で観て上げる」
 とヒュー/\風の吹くのに濠瑞(ほりばた)に立って客を呼んで占いをしている。ところが中に洒落や串戯(じょうだん)に見て貰った者が、怖いように当ってこれを人に吹聴をする。私も見て貰おうと、段々客が付いて来たが、困る者からは見料(けんりょう)を取らない。そういう具合だから、扮装(みなり)も汚ない。脅かしもないから、見料を置く者も沢山は置かないような訳、ところへ麹町三丁目の米屋さんで、家作(かさく)を造(こし)らえたが、住人(すみて)が落ち着いていない。どうも気になるから、白井左近に見て貰うと、これはこういう所が悪い、ここをこう直せば巧(うま)くゆくと教えてくれたので、その通りにして見ると成程巧くいった。ソコで米屋さんが喜んで、
米「どうですえ先生、失礼だが、お前さんこうして此所(ここ)に立って売卜(うらない)をしているより、私(わし)の家作(かさく)で麹町の平河町に元医者が住んでいたのが悪い事をして変死をしたので、化物が出るなどといって、誰も住まわない家(うち)が一軒あります。家も立派だし、庭も広いから、其処(そこ)へ入っておやんなすってはどうで、金主(きんしゅ)ではないが万事御世話をしましょう」
 というので左近も喜んで、その家へ入って、米屋の亭主の指図でちょっと様子をよく見せるように造って、本などは先生見ないでも心得ているが、それでも世 の中には馬鹿が多いからと、机の上へ易の本を積み重ねたり何かして、賑やかにして店を開くと、大層評判になって、毎日朝から絶間ない位に客が来るようにな りました。丁度七月の初旬(はじめ)、朝の内一しきり見てしまって、これから御飯を食べようと思って、ヒョイと玄関を見ると、まだ一人、人品(じんぴん)の好(よ)い人が待っております。
タグ:立川談志
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