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番外編: 桂枝雀 貧乏神 [落語]

桂枝雀 貧乏神
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私は、落伍者。

三味線栗毛(しゃみせんくりげ)
五代目三遊亭圓生

錦「そんな御無理を仰ってはいけません。私は七ツの時にこんなになりましたので」
若「七歳(ななつ)の時に閉(つぶ)ったぎりか。只今何歳じゃ…アヽ左様か、永年じゃの。何か其方、癇(かん)のためにそうなったのか」
錦「ナニ癇のためじゃァございません。七歳(ななつ)の時に疱瘡(ほうそう)にかヽりまして、すでに生命(いのち)の危うい所を助かりました代わりに目がいけなくなりました。それでも命が助かったお蔭でこうして按摩をしております」
若「アー盲人か其方は…ウームしかしそうして目を閉(つぶ)りきりにしておったら夜分も睡(ねむ)い事はなかろうな」
錦「そうは参りません。目は閉(つぶ)っておりましても心までは寝ません」
若「左様か、夜分笛の音(ね)が聞こえたゆえ吉兵衛にあれは何じゃと聞いたら、按摩の笛だと申したが、外を笛を吹いて歩くのは其方か」
錦「左様でございます」
若「毎夜(まいよ)か」
錦「ヘエ」
若「雨降(あめふり)風間(かざま)雪(ゆき)などの夜(よ)は、盲人の身ではさぞ難儀(なんぎ)であろうな」
錦「ナニ子供の時分から慣れておりますから、さのみ難儀とも思いません」
若「異な事を尋ねるようじゃが、そうして其方歩いておって何か望みがあるか」
錦「殿様の前でございますが、大きければ大きい、小さければ小さいなりに人には望みがございますもの」
若「成程、何が其方望みじゃ」
錦「私は金(かね)が欲しいと思っております」
若「ハァ左様か。金を何に致す」
錦「何にすると仰って、金が無ければ官位(かんい)が取れません」
若「白痴(たわけ)たことを言うな。金で官位が自由になるか」
錦「エー成りますとも、よく人が盲人を捉まえて座頭(ざとう)々々と仰いますが、座頭と言われるには大変でございます。座頭の上が勾当(こうとう)、勾当から検校(けんぎょう)、検校となると中将(ちゅうじょう)の位の方と同格でございます」
若「デハ何か盲人の官位は金で得られる。それで金が欲しいと申すのか」
錦「左様でございます」
若「其方は金を貯めて検校になろうというのか」
錦「どう致しまして、検校どころではございません。座頭も覚束のうございます」
若「何故じゃ」



タグ:桂枝雀
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