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番外編: 東京コミックショー

東京コミックショー

蛇の芸です。

幼い頃に見た記憶があります。





三味線栗毛(しゃみせんくりげ)

五代目三遊亭圓生


錦「何故じゃと言って、検校になりますには千両要ります。一口に千両といいますが、なかなか大変でございます」
若「しかしゆくゆくは検校になりたいというのが其方の望みじゃな。左様か…、何か他に楽しみがあるか」
錦「楽しみと申しても、見る物は到底いけません。マァ聞く物ですな」
若「聞く物…、小鳥の音(ね)を聞くとか、虫の音(ね)を聞くとか」
錦「そんなものは喧(やかま)しくっていけません」
若「何じゃ」
錦「雨でも降って御療治(ごりょうじ)のございません時には、両国か何かの昼席(ひるせき)へ行って、転(ころ)がっているんでございます」
若「寄席(よせ)…、アー成程、先度(せんど)両国で見た幟(のぼり)などを建てた騒がしいものじゃ。アノ中に何がある」
錦「落語(はなし)があり、講釈があり、義太夫がございます。私は主に落語(はなし)を聞いて笑っております」
若「落語(はなし)とはどんなことをする」
錦「貴所(あなた)御存じございませんか」
若「寄席という所へ参ったことがないから左様な物は知らん」
錦「それでは殿様こう致しましょう。私が御療治(おりょうじ)をしながら、聞き覚えの落語(はなし)を一ツニツお聞きに入れましょう」
若「それは一段と面白かろう。肩を揉みながら話してくれ。コレ/\手を取ってやれ」
 錦木は背後へ廻りまして、聞き覚えの落語(はなし)を一ツニツ申し上げる。初めてお聞きになった若殿、可笑(おかしい)の可笑(おかしく)ないの、大層御意に適(かな)いました。
若「面白い奴じゃ、斯様(かよう)いたせ。明日(あす)から外出をいたさんで、昼のうちに読書して、夕方から其方の来るのを楽しみに待っておる。別段迎いは遣らんが、苦しゅうないから、ズット参れ」
錦「有難うございます。お蔭でお華主(とくい)が一軒殖(ふ)えました。つきましては、つかん事を伺いますが、貴所様(あなたさま)は御当家の御親戚(おみより)でございますか」
若「違う/\。家中(かちゅう)だよ」
錦「ナニ嘘でございましょう。ヘエ真実(まったく)でげすか…それでは御家中から一足飛びに御大名になれるものでございましょうか」
若「白痴(たわけ)た事を言うな」
錦「なれませんか」
若「イヤあながち成れぬという限りもない。豊太閤(ほうたいこう)も初めは足軽奴僕(あしがるぬぼく)であった。それが後(のち)には太政大臣(だじょうだいじん)の御位(みくらい)に昇ったから成れぬ事もないが、しかしあの頃と今日(こんにち)とは時節が違う。太平の世の中で、家中から大名になるというは、マァ滅多にないな」
錦「エー、変な事を申しますようでございますが、私どもの支配頭(しはいがしら)を惣録(そうろく)と申します。本所(ほんじょ)一ツ目向こう、弁天様の傍(そば)に惣録屋敷というのがございます」
若「ウム」
錦「其処(そこ)に毎月(まいげつ)儒者が出張(でば)りまして、いろいろなお講義がございます。私どもはへボ按摩でございますが、私の師匠は毎月(まいつき)其処へ詰めます」
若「成程」





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